【完全自然周期とは……薬による排卵誘発を行わない、より自然に近い方法で妊娠を目指す治療法】
完全自然周期体外受精は、薬(内服・注射)による排卵誘発を一切行わず、自然な月経周期の中で育ってくる卵胞から採卵をし、それを受精させ、原則新鮮胚で移植する方法です。排卵誘発を行わないため、通常採卵できる卵子の数は1つですが、全卵胞採卵により複数卵子を回収できることもあります。
自然な月経周期を崩さず、卵巣やからだに負担を与えないようにすること、なるべく自然妊娠に近い状態が、実は一番妊娠しやすい方法なのです。
まずは、この方法でからだに負担をかけることなく、そして医療による手助けを過剰に行わない、より自然に近い方法で妊娠を目指します。
【なぜ完全自然周期なのか……卵巣が選んだ卵子こそが「最良の卵子」だからです】
すべての治療の基本になります。排卵に至る過程は一人ひとり異なります。卵胞の成長速度、女性ホルモンの増加の仕方、排卵に至るタイミングなど皆さん固有の「くせ」があります。完全自然周期はこの「くせ」を知るために重要です。
また、卵巣の能力は年齢とともに低下します。それは止むを得ませんが、低下した状態に強い作用の薬剤、ピルや多量の剤を排卵誘発投与するのは控えるべきだと私たちは考えています。それは、卵巣の能力が一層の低下を招く危険があるからです。完全自然周期は、この卵巣の能力を正確に評価するためにも重要です。
しかし、なにより重要なのは、完全自然周期こそ最も優良な卵子を選んでくれる周期なのだということです。完全自然周期で選ばれた主席卵胞には、年齢によらず、女性の最良の卵子がねむっていて、あなたを待っているのです。卵巣の能力が低下しても、赤ちゃんになれる卵子は必ず残っているのですから。
なお、『完全自然周期』は、もっとも自然に近い身体への負担が少ない治療法ですが、排卵時期のタイミングや採卵前に排卵する可能性がありますので、当クリニックでは自然排卵によるキャンセルを予防するために、午前中の診察をお願いしています。
【このような方に適した治療法です】
- 月経周期が26日~35日(良好な卵巣機能の方(※)
※診察、検査を行ったうえで診断いたします。
【通院スケジュール】
月経2、3日目
月経2、3日目は診察の基本です。卵胞(卵子を入れている袋/月経3日目で径約5mm)数、FSH(卵胞刺激ホルモン)、AMH(抗ミューラー管ホルモン/卵胞数のホルモン的指標、当クリニックではpM単位)、の計測、前周期の遺残卵胞がないかなど、その周期の基本情報を確認します。 完全自然周期では薬剤はまったく使わず、卵胞の成長を見守ります。
月経10、11日目頃
2回目診察は、月経10、11日目頃です。これは治療周期2、3日目に決定されます。卵胞の発育を確認し、状況に応じて、ホルモン検査を行います。早い人はこの時点で採卵日が確定しますが、通常はこの時の所見を基に3回目の診察日(月経13、14日目頃)を決めます。
採卵日の決定(予定採卵)と準備
数回の診察の後、女性ホルモン値と主席卵胞の大きさが最適になったら、採卵日を決定します。通常は女性ホルモンが250程度に達すると採卵の準備に入ります。排卵を促す脳ホルモン(LH:黄体化ホルモン)が上昇していない場合は、ブセレキュア(GnRHアゴニスト)という点鼻薬を用いて人工的に上昇させ、2日後の午前中に採卵します(予定採卵)。しかしLHが予想より早く上昇してしまった人は自然の成り行きに従って、当日または翌日の排卵直前に採卵します(緊急採卵)。