PGT-A、PGT-SRとは?
※PGT-A=Preimplantation genetic testing for aneuploidy
※PGT-SR=Preimplantation genetic testing for Structural Rearrangement
一般的に、妊娠出産の流産率は、年齢とともに上がりますが、その要因の一つに、受精卵(胚)の染色体数の異常が考えられます。特に、妊娠12週目までの流産は、受精卵(胚)の染色体異常がおもな原因と言われています。
『PGT-A(Preimplantation genetic testing for aneuploidy)』では、体外受精によって得られた受精卵(胚)の染色体数を、移植する前に調べることで、受精卵(胚)の染色体数に起因する流産を避ける目的で行います。また、ご自身(ご夫婦いずれか)に元々染色体の形が変化している箇所がある場合(染色体構造異常)に行うPGT-AのことをPGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)と言います。
>> 詳しくはこちらをご覧ください
※日本産科婦人科学会Webサイト
日本国内におけるPGT-Aの背景
長らく日本国内では命の選別につながるとの観点からPGT-A検査を認めていませんでしたが、2017年11月から日本産科婦人科学会主導により、「PGT-Aの有用性に関する多施設共同研究のためのパイロット試験」が実施されました。
続いて「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」が開始され、2022年8月末で臨床研究が終了となりました。
臨床研究終了後、2022年9月より一部の患者様に対しては、PGT-AおよびPGT-SRをご案内できるようになりました。
対象者
- 反復ART不成功の患者様
過去の胚移植で2回以上して臨床的な妊娠(胎嚢確認)ができていない方 - 習慣流産
過去に2回以上流産(胎嚢が確認されてからの流産)を経験された方。
※化学流産は含まない - 染色体構造異常
ご夫婦のどちらかが、生殖に影響する染色体構造異常(転座、逆位)をお持ちの方
検査までの流れ
PGT-Aの申し込み
通院中の方は診察時にお申し出ください。
通院歴がない方は公式LINE、個別相談会等よりご相談ください。日本産科婦人科学会にてPGT-Aの説明動画が作成されています。
受診前に必ずご視聴ください。
>> 動画はこちらからもご視聴いただけます
※日本産科婦人科学会Webサイト- 動画視聴に関するチェックリストの提出
- 症状に応じて遺伝カウンセリングを実施後、同意書の提出
- 治療開始
メリット
染色体数の異数性を示す胚盤胞を移植候補から除外することで、流産のリスク軽減、身体的精神的ストレスの軽減、移植あたりの妊娠率の向上が期待できます。
デメリット
胚盤胞の細胞を採取する際に、胚にダメージを与える可能性があります。胚への安全性は問題ないと考えられていますが、ダメージによる妊娠率の低下などは、完全には否定されていません。
注意点
- 検査をするために胚盤胞まで培養する必要があるため、初期胚移植はできません。
- 染色体異常に起因しない流産を防ぐことは出来ません。
- 検査をした胚が、すべて異数性胚の場合、移植できない可能性があります。
- 異常がないのに異常ありと判断されたり(偽陽性)、反対に異常があるのに異常なしと判断されたりする(偽陰性)の可能性(5~15%)があります。
- 胚の時点での異常を検査するものであり、出生児に障害が無いことを保証するものではありません。
- 男女の性別の開示はできません。
- PGT-A/SRは日本産科婦人科学会から承認を得た施設でのみ行うことが可能です。そのため、原則としてPGT-A/SRを行った胚を他施設へ移設(持っていく)ことはご遠慮いただいています。
Q&A
- 誰でもPGT-Aに参加できますか?
- 反復ART不成功の方、習慣流産の方、ご夫婦のどちらかが染色体構造異常をお持ちの方を対象としております。
- 結婚していないとPGT-Aに参加できませんか?
- 事実婚の方でもPGT-Aは可能です。
- 検査した受精卵(胚)の性別は分かりますか?
- 日本産科婦人科学会の規定により、性別のお伝えは出来ません。ただし、性別に関する染色体に変化が認められた場合は、遺伝カウンセリングにてお伝えする場合があります。
- PGT-Aを行なえば必ず妊娠できますか?
- PGT-Aは受精卵(胚)の染色体の数を調べる検査です。染色体数に起因する流産を避けることが期待できますが、その他の要因の流産は防げません。また、妊娠・出産に至ることを100%保証するものではありません。
- PGT-Aで生まれてくる子は先天性異常がないと考えていいですか?
- 染色体数や構造に変化が認められ、それが先天性異常が起こる要因と考えられる場合、その胚を移植から除外することで先天性異常を持った児が生まれるリスクを下げることが期待できます。しかし、それ以外の要因で起こる先天性異常を防ぐことはできません。
- PGT-Aを行なったら出生前診断は必要ないですか?
- PGT-Aは胎盤を形成する細胞の検査であり、胎児の情報を100%反映しているとは言い切れません。また、染色体以外の原因による病気はわかりません。羊水検査の必要性について、妊娠の経過を見ながら産科の先生とご相談ください。
料金について
- PGT-A検査費用:88,000円(税込)
- 遺伝カウンセリング:11,000円(税込)
- 詳細な検査費用等については、お問合せくださいますようお願いいたします。
またこちらの検査費用以外に通常の体外受精費用がかかります。体外受精費用はこちらをご確認ください。